童貞が新入生と遭遇する-中編

ところで、ちょっと話は変わるのだけど、
新入生には当然男もいるわけだ。
正直、俺的にはいてもいなくても、どうでもいいんだが、入ってくる。
定食についてくるパセリくらい目障りなんだが、入ってくる。

そういうわけで、俺は基本的に
自分もかつて新入生だったことを棚に上げて、
男の新入生を相手にしない。
もっとはっきり言えば、無視している。

が、去年は約一名例外がいた。
竹崎君(仮名)だ。

数多くの新入生の中で、なぜ彼だけが特別なのか?

それは、竹崎君がバカだからです。
俺でさえ驚いてしまうほどのバカなんです。
そのくせよく喋るんです。
うるさいんです。
しかも、動きがかつてのルー大柴みたいなんです。
でも、純朴で憎めない奴なんです。

それって、最高の引き立て役じゃないですか。
詐欺師が真っ先に目をつけるタイプですよ。

竹崎君にツッコミを入れるだけで、大爆笑。
竹崎君をいじるだけで、大御所芸人気分。
ボケがスベッたら竹崎君でごまかす。
困ったら竹崎君。
今まで延々と非童貞集団の引き立て役筆頭を務めてきた俺にとって、
竹崎君は正に一筋の光、救世主なわけだ。
もうこれは、
一家に一台TAKEZAKI(【TAKEZAKI】は童貞の登録商標です)の時代なわけだよ!

そうして、やがて器の小さい俺は、
「竹崎君を踏み台にして新入生と仲良くなろう」
という、もはやモテないとかそういうレベルじゃなくて、
人としてどうかと思うような作戦を思いついたのだよ。

何しろ竹崎君、なんかもうバカすぎて、
もはや男とか女とかそんな染色体の次元などすでに超越しており、
マスコット的なポジションを手にしていたわけ。
具体的に言うと、ガチャピン。
女の子たちも、安心しきってんの。
中でも竹崎君を気に入っていたのが、今出川タン(仮名)だった。
なんか竹崎君に聞いたら、結構メールとかしてるらしいのよ。
ちょっと悩みとか聞いたりしてるらしいの。

それを聞いたとき俺は、とりあえず竹崎君のポジションにかなり嫉妬しつつ、
「これだ!」と思ったね。
確かに竹崎君は彼女に近い位置にいる。
が、しかし。
哺乳類にとって、ガチャピンは恋愛対象にはならないのですよ。
だってガチャピンは緑色だもの。

で、俺は早速竹崎君を飲み屋に拉致し、「おごるよ」と金で懐柔。
今出川タンの趣味とか、見たがってる映画とか、
スリーサイズとか、一人Hのときのオカズとかを聞き出そうとしたわけ。
さすがのガチャピンも、スリーサイズやオカズは知らなかったようだが、
俺は着々と今出川タンの情報を集め、
それを駆使して徐々に彼女と仲良くなっていった。
竹崎君からも、それとなく俺のいい噂(捏造)を流してもらったりしたわけ。
ああ、黙れ。こっちは必死なんだよ!!
姑息な手段以外に方法を知らないんだよ!

そんなわけで、映画とか見に行ったり、飲みに行ったりといったことを
数回(具体的に言うと2回だけだが)重ね、
少しずつ彼女といい雰囲気になってきていたのだよ。

そんな時、竹崎君から決め手の速報が入った。
「なんか最近、今出川さん、彼氏欲しがってるみたいなんですよね」
正にガチャピン、縦横無尽の大活躍ですよ!
そう言えば、最近メールのやり取りの中で、
「寂しいんですよ〜(苦笑)」みたいなのがちらほらとある。
「メール来ると嬉しいですよ(笑」とかそんなコメントもあった。
今こそチャンス!
その晩俺は、
「今出川タンはもはや陥落寸前であります!」
とJr閣下に上奏し、一足早い今出川タンとの戦闘の予行演習を繰り返したね。
リポビタンDまで投入しての、本番さながらのオナニーだったね。
明け方、散乱したティッシュを片付けたときのむなしさは今でも忘れられない。

その後、俺は慎重にチャンスをうかがい続けた。
そして、ついに訪れた3回目のデート。
俺はここで今出川タソに告白することを決めていた。
デートは順調な流れで夜の部に突入。
俺の極端に少ない知識を振り絞って選んだ、
お洒落な飲み屋での口説きタイムとなった。

俺は機をうかがい、さりげなく恋愛トークへ持ち込んだ。
「イ、イマデガガワさん、最近どうなの?」
なんだよ、それ。
「最近どうなの?」で話が通じれば、入試科目に国語は必要ない。
いくらなんでもアバウト過ぎる。
で、名前も噛んでる。
が、最近俺が、「時々挙動不審キャラ」として定着しつつあったようで、
彼女は気にする様子もなく、
「最近ですか〜?」と話を始めた。
俺、こんなんばっかりだな。
そこで彼女は驚くべき言葉を口にした。
「最近ちょっと好きな人が出来たんですよ」
よし、来た!
それが俺、という展開だろ?
うん、初めてだから優しくしてね。

と、ここまで考えたところで、思いとどまった。
…都合の良すぎないか?
今までの経験からして、この辺で落とし穴が来るはずだ。
そう、この展開で考えられるオチと言えば…
「もしかして竹崎君?」
俺はおずおずとその名前を口にした。
「ここで彼女がうなずいたら、竹崎を殴ろう」と硬く決意しながら。

が、彼女の答えはNO。
「違いますよ〜。竹崎君はいい人だけど、お友達ですもん(笑)」
俺(と竹崎君)ピンチを脱出。
そして今出川タンは追い打ちの一言。
「でも、竹崎君と仲いい人なんです。よく相談に乗ってもらったりしてるんですよ」
間違いない。
竹崎君との関係、彼女と俺の関係、そしてかすかに赤く染まった彼女の頬。
これはもう俺しかいない。
竹崎君に根回ししておいたのがここで実を結んだ!!
俺は彼女の口からその名前を聞き出すべく、
「えー、誰なの?」と追う。
すると、彼女は「え〜、恥ずかしい・・・」と可愛らしく照れながら、
ついに口を開いた。
「ほら、最近私、寂しいって言ってたじゃないですか」
うん、そうだね。

「そうしたら、竹崎君が男の子紹介してくれたんですよ〜(照」

出てこい、ガチャピン!!
殴る!俺はお前を殴る!!しかも力いっぱい!!
お前はお人好し過ぎる。
と言うか、俺があれだけ「今出川タンを狙ってる」という行動を起こしていたのを、
なぜ察さない?

「すごいカッコいいんですよ」と嬉しそうに話してくれた彼女は、
後日めでたくその彼と付き合うことになってたよ。
「男とか女とかいう次元を越えていたのは、竹崎君だけじゃなくて、俺もだ」
と気付いたあの夜の傷はまだ癒えていません。

そういったわけで、今回の童貞の主張は、
「他の男とくっつくのはいいが、せめて童貞を男と認識してください」
ということです。

ご清聴ありがとうございました。

後編へ続く

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