バレンタイン-前編

さて、今夜も童貞の私は暇です。
週末だろうが、祝日だろうが、
クリスマスだろうが、バレンタインだろうが、容赦なく暇です。
と言うより、そういう日のほうが圧倒的に暇です。
そういうわけで、今夜も身勝手に説教です。
非童貞のカスどもは、クンニしながらでいいので聞いてやってください。

クリスマスだの何だのと、
童貞的には街角のカップルを片っ端から殴り倒したい季節も終わり、
今年も犯罪者にならずにすんだ、とほっと一息ついているとだ、
誰が決めたのか知らないが、バレンタインとかいうふざけた行事がやってくるわけだ。

まぁ、もちろん俺くらいの年になると、もうそれほどたいした行事ではないし、
クリスマスなどの苦行を乗り越えている童貞にとっては、
もはやどうということもない。
下手をすれば忘れているうちに終わってしまうくらいだ。

例によって飽きもせず、非童貞どもが、
「正直言うとさぁ、俺あんまりチョコ好きじゃないから困るんだよな、もらっても(笑」
だの、
「お返し考えるのが嫌なんだよなぁ。金ねえのに」
だの、飽食の時代の見本のような発言を繰り返し、
いつもどおりイケメンの彼が「わかる、わかる」と
並外れた理解力を発揮したりするわけだが、
俺ももういい年だし、ほとんど意識しない。
正確に言うと、必死にそういうフリをする。
カレンダーには赤ペンでチェックがついている。
恥ずかしくなってそれを修正液で消した跡が残っている。

まぁ、そういうわけでだ、平静を装っている俺だが、
いつも通り、はらわたが煮えくり返るような非童貞への憎悪と
「もしかしたら密かに俺を想っていた美人(不特定多数)が熱い愛の告白を…!!」
という過剰な妄想と股間を膨らませながら、オナニーに励むのがこの時期なわけだ。

この時期に不用意に接近した婦女子の諸君は
容赦なくその日のおかずにされているので、十分気をつけてもらいたいところだ。
貴女の乳首にも俺の妄想によってチョコが塗りたくられている可能性は否定できない。

さて、こう書くとまるで俺が
バレンタインとはまるで縁のない男だと思われがちだが、
決してそんなことはない。
童貞だと思って馬鹿にしてるだろ、そこのイケメン。
お前らと製菓メーカーとベルギー王室のためだけにバレンタインがあるわけじゃねえんだよ。
こう見えてもバレンタインは引っ張りだこだったんだよ。

中学高校時代はだな、バレンタインに学校に行くと、
おもむろに女子どもがちらちらと俺の方を見てくるわけだ。
すでにこういう事態には慣れっこだったから、
おとなしく何事もなかったように昼休みあたりまで待つわけ。
それで昼になるとだな、いよいよ奴らも動き始める。
やれやれ、人が心穏やかに昼食をとっているのに、せわしない、
と心で思っているような顔をしつつ、実際には嬉しくて仕方ない。
で、あふれんばかりの笑顔で彼女たちは言うわけだ。

「…これ、○○君に渡して欲しいんだけど」

毎年思ったね。
君たちは鬼か、と。
わかってはいるけど、毎年こっちは期待するんだよ、ボケ!
体育倉庫に連れ込むぞ。
と、まあ心の中で悪態をつきつつ、
こいつがフラレたら優しくしておいた俺に心傾くかもしれない、
という今も昔も変わらぬ下心のために、にこやかに引き受けるわけだ。

そんなわけで、
「井上君(仮名)が帰らないように放課後少し引き止めておいて」
だの、
「吉岡君(仮名)って今日どこにいるかわかる?」
だのという、彼女たちの頼みを延々聞くことになる。
あのな、井上君(仮名)はもう彼女いるし、吉岡君(仮名)は今日休みだ。
あと、お礼の義理チョコだけど、どんなに綺麗に包装しようが、
板チョコは板チョコなんだよ。
そもそもお前誰だ?

そんな風にして、
普段話したこともないような婦女子どものお願いにかどわかされて、
気忙しく俺のバレンタインは過ぎていくわけだ。
あとは、「渡しておいて」と言われたチョコの相手が見つからなくて
日が暮れるまで校舎をさまよった俺の気も知らずに、
楽しそうに談笑する新カップルの後姿を見守る日々ですよ。
いいか、お前、一つだけ言っておくが、
その女に最初に目をつけてたのは俺だぞ。

しかしだ。
神はいたよ。
高1のときだったね。
いつも通り色々な意味で疲れて帰ろうとする俺の前に
井上君(仮名)にチョコを渡そうとしていた女がいるわけだよ。
具体的に言うと4番手(当時)。
しかもなんか泣いてるわけだ。
俺はここぞとばかりに、
凛々しく「どうしたの?」と声をかけようとして、案の定どもるわけ。

で、あんまり凛々しくどもったもんだから、
見栄っ張りの俺はわざとらしく咳込んで、
「ごまかしきった!」とやや誇らしげに素通りしようとしたわけだ。
後で「冷たい奴だと思った」と率直な意見を言われたね。

だが、何を思ったか彼女の方から声をかけてきたのだよ、泣きながら。
ああ、勃ってたよ。
それで、
「ごめんね、わざわざ協力してくれたのに…」
とか言うわけだ。

下心大作戦的中ですよ。
全て俺のシナリオ通り。
シナリオに従えば、彼女は受けとってもらえなかったチョコを
俺におずおずと差し出す。
水戸黄門で言えば印籠登場のシーンだよ。

そして、
「井上君(仮名)彼女いたんだって…」
と言いながらチョコを差し出す彼女。
「よかったら…」
勝ったと思ったね。
漏れ、優勝。
早くも本年度アカデミー賞最有力候補。
すでにこの時点で近辺のラブホの場所をサーチし始めてたよ、俺は。

「…もったいないから食べてくれない?
私、次、森下君(仮名)に渡しに行ってくるから」

…うん、ありがとう。
転ばぬ先の杖って大切だよね。
彼女が涙をぬぐいながら立ち去った後で
大空へ向かって投げたよ、チョコ。
で、もったいないから拾って食べたよ。
彼女?次の日から森下君(仮名)と楽しそうに手をつないで帰ってたよ。

そういったわけで、今回の童貞の主張は
「バレンタインに浮かれるのはかまわないが、
婦女子は、童貞も男だということを忘れないでくれ」
ということです。

ご清聴ありがとうございました。

なお、非童貞に対するバレンタインの説教は、次回改めてさせていただきます。

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